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外断熱と内断熱の違い|メリット・デメリットや選択のポイントについて解説

住宅の断熱方法には「外断熱」と「内断熱」の2種類があります。それぞれの断熱方法では工法が異なり、断熱性能や費用にも違いがあります。この記事では、2つの断熱方法の違いやメリット・デメリット、建物の構造別にどちらの断熱方法が良いのかについて詳しく解説します。リフォームやリノベーションを検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。

外断熱とは?

外断熱とは、建物全体を一体化させるように、柱と壁の間に断熱材を設置する工法のことです。断熱材で包み込むことで機密性が高まり、熱の出入りを効果的に遮断できます。室内の温度を一定に保ちやすくなるため、冷暖房の効率が向上します。

また、結露の発生が抑えられることも外断熱の特徴です。建材の劣化やカビの発生を防ぎ、建物の寿命を延ばすことにもつながります。

使用できる断熱材は限られており、主に繊維系断熱材と発泡プラスチック系断熱材のいずれかが用いられます。

繊維系断熱材:グラスウールやロックウール、セルロースファイバーなど

発泡プラスチック系断熱材:ポリスチレンフォームやウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、フェノールフォームなど

工法は「湿式工法」と「乾式工法」の2種類です。湿式工法では、断熱材をコンクリートに密着させるため、軽量かつ透湿性のある素材が使用されます。 一方、乾式工法では、支持金具を用いて断熱材を固定し、外壁材との間に水蒸気の通り道を設けることで、湿気による影響を防ぎます。

外断熱のメリット

外断熱にはメリットとデメリットの両方があります。まずは、4つのメリットについて見ていきましょう。

高い断熱性能と気密性を実現できる

外断熱は、建物全体をぐるっと外側から断熱材で包み込むため、断熱材の隙間が少なく、「熱橋(ヒートブリッジ)」がほとんど発生しません。

ヒートブリッジとは、断熱層を貫通する部分で、熱が伝わりやすくなる箇所のことです。これをなくすことで、外気温による影響が小さくなり、年間を通して過ごしやすい室内環境を実現できます。

また、断熱材をひとつなぎで設置することで家の中は「魔法瓶」のような環境となり、建物の気密性が高まり、エネルギー効率が向上します。省エネ効果を最大限に引き出すことも可能で、年間の冷暖房費も安く済むでしょう。さらに、外部の騒音を遮断する防音効果もあり、静かで快適な住空間を実現します。

結露を防止する効果がある

高い機密性によって、防湿性も向上し、結露が発生しにくくなる効果があります。建物全体を外側から断熱材で包み込むことで、室内の温度を均一に保ちやすくなるためです。

一方、断熱材が部分的に切れる場合、その箇所がヒートブリッジとなり、そこから熱が伝わりやすくなるため結露が発生する可能性が高くなります。

断熱材をひとつなぎで設置する外断熱では、断熱材の切れ目ができないため、結露が発生しない傾向にあるのです。これにより、カビやダニの発生を抑え、健康的な室内環境を維持することにつながります。

建物の耐久性を向上させる

外側から断熱材で覆うことで、主要な構造材が保護されるため、建物の耐久性を向上させる効果があります。

コンクリートは時間とともに劣化し、膨張収縮によってクラック(ひび割れ)が発生しますが、断熱材がこれを防ぎます。しかし、外断熱工法では、厚い断熱材がコンクリートを保護し、劣化を遅らせることが可能です。

また、外から吹き込む湿気や冷気を遮断し、結露や木材の腐朽を防ぎます。これは、断熱材や構造材の劣化を防ぐことにもつながり、建物の内部環境が安定して長寿命化が実現できます。さらに、断熱材で構造体が守られることで、全体の強度が維持され、長期間にわたって快適で安全な住環境を提供することが可能です。

長期的には省エネ効果が高い

断熱性能に優れている点も大きな特徴で、冷暖房効率が大幅に向上し、室内の温度を快適に保ちやすくなります。毎月の冷暖房費も抑えられ、家計にも優しい選択肢となるでしょう。

外断熱工法では、コンクリートが厚い断熱材で守られているため、室内への熱放射がほとんどありません。コンクリートが室内温度に同調し、夏は涼しく、冬は暖かい状態を維持できます。

さらに、建物の耐久性が向上することで、メンテナンスの頻度が減少し、メンテナンスコストも削減されます。長期的な視点で見ると省エネ効果が高く、経済的なメリットが大きい工法です。

外断熱のデメリット

続いて、外断熱の主なデメリットについて見ていきましょう。

初期コストと施工コストが高くなりやすい

建物全体を断熱材で覆うため、施工が比較的難しく、材料費や施工費が高くなってしまう傾向にあります。施工費として100万円以上は見ておかなければならないでしょう。

性能に優れた断熱材を使用する場合などは、特に初期コストが高くなってしまいます。また、汎用工法が確立されていないために、施工できる業者も少なく、施工期間が長くなる点もデメリットです。

さらに、断熱材を外側に取り付けるため、外壁に厚みが出てしまいます。建物が大きくなり、敷地に余裕が必要となります。建築基準法の制限によっては、間取りを変更しなければならないかもしれません。デザインにこだわった住宅や狭小住宅には向かない場合もあります。

使用できる断熱材の種類に制限がある

使用する断熱材には、軽量かつ耐久性が高いものが求められます。そのため、使用できる資材の種類が限られます。

一般的に使用される断熱材は、繊維系断熱材(グラスウール、セルロースファイバーなど)や発泡プラスチック系断熱材(ポリスチレンフォーム、ウレタンフォームなど)です。採用されている断熱材の中で特に多いのが、耐水性と透湿性が高い「ポリスチレンフォーム」です。

しかし、これらの断熱材には厚みの制約があり、厚すぎると壁全体の厚さが増し、窓枠などの開口部に影響を及ぼす可能性があります。また、断熱材の厚みが30mm程度に制限されることも多く、厚みが出せないために十分な断熱効果を得にくい場合もあります。そのため、適切な断熱材を選ぶ際には、材料の特性や建物の条件について考慮することが必要です。

内断熱とは?

内断熱は、建物の内部に断熱材を設置する断熱方法で、現在最も一般的な工法です。「充填断熱」や「内張り断熱」とも呼ばれます。鉄筋コンクリート造では構造体の内側に、木造や鉄骨造では柱と柱の間に断熱材を挟み込みます。

主な特徴は、施工が容易でコストが低いことです。外壁に影響を与えず、敷地面積を選ばないため、さまざまな建物に適用できます。

また、使用できる断熱材の種類が多く、安価なものから高性能なものまで選択肢が広がります。例えば、グラスウールやセルロースファイバーなどの繊維系断熱材や、発泡ウレタンなどの発泡プラスチック系断熱材が使用可能です。

外断熱との違いは、断熱材を設置する場所が異なる点です。外断熱は建物全体を断熱材で覆うのに対し、内断熱は柱と柱の間に断熱材を設置します。このため、部分的な断熱となり、外断熱に比べて気密性が低くなる傾向にあります。

内断熱のメリット

内断熱にはさまざまな利点があり、広く採用される一般的な断熱工法です。ここでは、外断熱と比較した3つのメリットについてご紹介します。

施工が容易でコストが比較的低い

内断熱は、比較的施工が簡単であるため、多くの業者が対応可能です。素材を貼り付けたり、吹き付けたりするだけの工事で済むため、施工費用も安く抑えられる傾向があります。

外断熱と違い、全体を覆う必要がないため、部分的な断熱が可能で、その分コストを削減できます。また、施工が比較的短期間で完了するため、作業コストも低く抑えられます。

技術も確立されており、一般的な工法として広く採用されています。このため、施工業者の選択肢が多く、競争が激しいため、価格も抑えられる傾向にあるのです。初期費用が低く、予算を抑えたい場合に適しています。

外壁に影響を与えにくい

コンクリートの内側や柱の間に資材を設置するため、外壁にそこまで厚みが出ず、外観のデザインに与える影響がほとんどありません。外断熱では断熱材で建物を覆うため外壁が厚くなりがちですが、内断熱ではその心配がないため、さまざまなデザインやこだわりを持った建物との相性が良いです。

また、柱や壁の間に断熱材を敷き詰めるため、変わった形の住宅や狭小地でも対応可能です。土地が限られている場所でも、余計なスペースを取られずに広い居住空間を確保できます。

さらに、外壁に影響が出にくいため、デザインや仕上げをそのまま保つことができ、外観を損なうことなく断熱性能を向上させることができます。外断熱の場合、一部のみ可能ではあるものの、建物全体の外観をコンクリート打ちっぱなしのデザインにすることは難しいです。外観のデザインにこだわりたい方には、内断熱の方が適している場合が多いでしょう。

断熱材の種類が豊富で選択の幅が広い

使用できる断熱材の種類が豊富であるため、建物の特性や予算に応じて最適な断熱材を選ぶことが可能です。例えば、コストを抑えたい場合はグラスウールやロックウールなどの比較的安価な素材を、高い断熱性能を求める場合は硬質ウレタンフォームやフェノールフォームなどの高性能な素材を選べます。

また、環境に優しい素材や健康に配慮した素材も多くあります。リサイクル素材を使用した断熱材や、化学物質を含まない自然素材の断熱材などがあり、環境負荷を低減し、住む人の健康にも配慮した断熱工事が可能です。

内断熱のデメリット

外断熱よりも多く施工されている内断熱ですが、以下の2点が主なデメリットとなります。

外断熱に比べて気密性が低くなる

建物の内部に断熱材を設置するため、外断熱と比べて気密性が低くなる傾向があります。

外断熱では建物全体を断熱材で覆うため、断熱材が切れ目なく連続して配置され、気密性が高まります。一方、内断熱では構造材の間に断熱材を設置するため、断熱材が途切れる部分が生じやすく、ヒートブリッジが発生しやすくなるのです。

このため、外気が入り込みやすくなり、室内の温度を一定に保つためのエネルギー消費が増える可能性があります。特に、鉄筋コンクリート造の建物ではこの傾向が顕著です。冷暖房効率が下がることもありますが、施工の仕方と断熱材の選択によって、ある程度の改善が可能です。

結露のリスクがある

内断熱では、建物の内側と外側で温度差が生じやすく、特に鉄筋コンクリート造の住宅では湿気がたまりやすくなります。また、断熱材同士の切れ目がヒートブリッジとなり、そこから結露が発生しやすくなります。

結露が発生すると、カビやダニの発生を促進し、室内環境が悪化しかねません。また、結露が建材に浸透してしまうと、木材が傷んだり鉄骨が錆びたりなど、建物の劣化を引き起こすリスクも高まります。断熱材の種類や施工方法によっては、結露が発生しやすくなることもあります。

建物の構造による外断熱・内断熱の違い

木造建築

木造建築では、一般的に内断熱が適しているとされています。木材は通気性や断熱性、吸湿性に優れており、内断熱でも十分な断熱性能を発揮するためです。反対に、外気によって冷やされにくいため、外断熱の効果が実感しにくい場合があります。

一般的に木造住宅で使用されるグラスウールは、ガラス素材を原料としているため燃えにくく、火災に強いというメリットがあります。

また、シロアリの被害にも遭いにくい点も木造住宅における内断熱の利点です。外断熱は快適な温度を保つ一方で、寒さに弱いシロアリにとっても快適な環境を提供してしまう可能性があります。

木造住宅で湿気対策をしっかり行いたい場合は、調湿効果が高く防虫効果も期待できるセルロースファイバーを使用し、透湿防水シートを併用する方法が有効です。湿気を好むシロアリ対策にもなります。

鉄筋コンクリート造

鉄筋コンクリート造(RC造)は、木造建築に比べて熱伝導率が高く、熱を通しやすい性質があります。そのため、断熱性が低く、寒さ対策が必要です。RC造の建物では、内断熱よりも外断熱が適しています。

外断熱は、コンクリートの外側に断熱材を配置するため、コンクリートが外気の影響を受けにくくなります。コンクリート全体を包み込むため、熱橋現象を抑え、効率的に熱を遮断します。

内断熱では、コンクリートの内側に断熱材を配置しますが、コンクリート自体が外気の影響を受けやすく、結露が発生しやすいです。RC造では外断熱を採用した方が、1年を通して大きな温度変化が少なく過ごせるでしょう。

まとめ

外断熱と内断熱にはそれぞれ独自の長所と短所があります。建物の構造や目的、予算に応じて適切な断熱方法を選択することが重要です。

外断熱は建物全体を断熱材で覆うため、気密性が高く、結露のリスクを低減し、カビやダニの発生を防ぎます。鉄筋コンクリート造の建物に適しており、効率的に断熱性能を向上させることが可能です。

一方、内断熱は施工が容易でコストが低く、断熱材の選択肢が豊富です。木造建築では、通気性や断熱性に優れた木材を活かし、内断熱が効果的でしょう。

最適な断熱方法を選ぶことで、快適な室内環境とエネルギー効率の向上が期待できます。断熱方法の選択は、長期的な住み心地や維持費にも影響を与えるため、慎重に検討することが大切です。

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